私は99年から6年間、ボクシングやプロレスなどバトル専任カメラマンでした。

ボクシング世界戦の前々日には調印式が行われます。試合と同じように何度となく調印式も撮影しました。何も動きのない調印式もあれば挑発などパフォーマンスの場となったこともありました。

18日、都内でWBA世界ミドル級暫定王者のアッサン・エンダムと村田諒太との世界戦調印式が行われました。写真撮影の時、村田はエンダムにこう話しかけたといいます。

村田「ポーズを変えたらずっとここにいないといけないぞ」

エンダム「いやいや、パフォーマンスだよ。あさってはグレートな試合になるから」

村田は長引く写真撮影に付き合わされるエンダムに配慮したと伝えられています。果たしてそれだけが理由だったのでしょうか。

私はこの写真を撮りながらこう感じていました。

世界戦でやるかやられるかの相手に気遣いは無用。相手は弱ってくれていた方がいいに決まっている。それでもエンダムに言葉をかける村田。「お互いに戦う前からすでに友情があるんだ」と。世界最高を目指す男たちだからこそ瞬間的に生まれた友情、そしてそれはボクシングそのものへのリスペクトでもあると思います。

二人の距離感、それは調印式ではありえない二人の顔の近さだけでなく、ひとつのベルトを二人でお互い支え合うこの距離感でもありました。

私が明日20日の試合を撮ることはありません。

よい試合になりますように。