「2年連続のリーグ優勝で古田(右)からビールをかけられ笑顔を見せる野村監督」(撮影・中島郁夫)

1993年10月15日、ヤクルトは神宮球場での対広島25回戦で勝利し、2年連続リーグ優勝を達成しました。

ビールかけは近くのホテルのプールサイドで行われ、私は野村監督と古田選手の「絡み」だけを待ちました。ところが!!

「かんぱ~い!!」の挨拶(あいさつ)で真っ先に監督にビールを掛けたのは古田選手でした。

その頃、撮影はフイルムを使用。撮影可能枚数は36枚。カメラとストロボは料理用のラップで厳重にくるんでビールから守ります。勝負は最初の36枚で決まります。(ラップを剥がしフイルム交換はをするため、時間的なロスで2度目のチャンスはナシに等しかったんです)

実は30年近く前・・・、私はノムさんにサインをお願いしたことがありました。後にも先にもサインをお願いしたのはノムさんだけです。ノムさんにボールを手渡すと・・・

「なんや、このボールぱくったんか?(笑)」

「いえ、きちんとお断りしいただきました」

笑いながら書いてくださったサインにはこんな言葉が添えられていました。

「前後裁断」

「お兄さんはいくつや。お兄さんくらいの年になると自慢出来る仕事もしただろう。失敗もしただろう。そんな過去と一旦区切りを付けこれからの仕事を頑張れ!という意味や」

野村監督・・・ノムさん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。サッチーが大好きなノムさんの左手薬指にはいつもゴールドのリングが輝いていました。

「なんや、今頃わしの追悼記事か(笑)」なんて声が聞こえてきそうです。「前後裁断」を胸に残りのカメラマン人生に精進したいと思います。さようなら。